起源と品種
たまねぎ[玉葱]
英語でオニオンonionという。西アジアの原産で,その隣茎が野菜として広く用いられる。ユリ科。鱗茎は品種によって多少の相違があるが、扇円または卵円で径3
-10cm、外側にかっ色薄膜質の外皮をかぶる。葉は数個ずつ出て中空で、粉緑色。花茎は夏季に葉間から出て,高さ50-100cmになり,円柱形で中央より下力にふくらみがある。花穂は華頂に単生し,はなはだ多数の白色の小花を密に散状につけて球形となる。花は6花破片が平開し,花心に6雄ずいと1雌ずし、とがある。
鱗茎が自然に分裂繁殖するトマトタマネギや,地下の鱗茎が小さく,花穂上に花と混じって1.5-3cmくらいの球形の小鱗茎をつけるヤグラタマネギもまれに作られる。果糖やブドウ糖を含み甘味がある。また灰分中にはイオウ,鉄を有する。(大井次三郎)
【栽培・品種】土壌適応性は広いが,根群は浅いので土壌水分の高いのを好む。早生種には適温の砂質土,貯蔵種には砧質士がよい。酸性およびリン酸欠乏に弱いため,火山灰土は向かない。好適温度は地上部生育に20-25℃,種子発芽に18℃(4-30℃でも発芽する),地下部(根)生育に12-20℃で,幼植物はー8℃にも耐える。したがって温帯南部-亜熱帯で秋から春,温帯北部で春から秋にかけて栽培される。
生育にともなぅ隣茎部の肥太は,温度および日長に支配されろ。肥太の限界日長は11.5-16時間で,品種に
よって異なり,中生種ほど短い。肥大の温度は15.5℃以「を要し,21-27℃で成熟して休眠する。一定の大きさに達して15.5℃以卜の低温にー定期間あうと柚蔓(ちゆうたい)するが,21℃以上で妨げられ,花芽分化期(日本では2月卜旬-3H上旬)前後の1千壌の過乾,肥料木足によって促進される。冊墓は温帯秋まき地帯銭坪の品肺,師まき瓜三の遊択に関係する。暖冬にはクー)ばか多い。成熟鱗茎は数カ月の休眠に人るが,出芽の漣速,程度
は品桶によって異なる。
品種には南ヨーロソパ系の甘タマネギと中東ヨーロッパ系の平タマネギがあり,全体として100を越える品種があるが,日本のものは,アメ
lリカ,フフンスから渡米土着した中東ヨーロッパ系がおもである。一般に,白色,早生のものは肉質が柔軟であるが貯蔵力が低く,黄色,かっ色種は肉質が締まり貯蔵力が大きく,豊産で,最も普及している。甘辛両種は起源を異にすると思われ,葉,鱗茎の形質,貯蔵力に差がある。日本にはアメリカから入ったイェロー・ダンヴァース・フラット(辛)が大阪に土着して泉州黄となり,暖地品種はこれから分化し,各地名や人名を冠した貝塚早生,愛知黄早、今井早生,淡路甲高,二宮丸などを成立させた。またイェロー・グローブ・ダンヴフース(辛)は北海道に土着して寒地作の札幌黄となり,山口県に土着して、貯蔵力の高い山口丸となった。このほかにフフンス系白タマネギの愛知白(辛)があって,これら三つが代表的な品種群を成している。甘タマネギはほとんどなくスペインのアーリーグラノ系の黄魁(さきがけ)があるだけである。(平凡社の百科事典より)
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